短篇集ーテンペストほか[ペーパーバックのみ]

 

これは紙の本です。
以下の5作品を「短編集」として紙の本にしました。

1.テンペスト
あるアマチュアオーケストラの若いコントラバス奏者の心に起きたほろ苦いさざ波と、ベートーヴェンのソナタが彼の心を癒すまでの小さな物語。
関連楽曲:ベートーベン作曲ピアノソナタ「テンペスト」

主人公はあるアマチュアオーケストラの若いコントラバス奏者。ある時若い女性チェリストが北海道の大学で同窓だった若者と一緒に入団してきた。彼らは親しい間柄の様だ。その彼女に主人公は恋してしまう。
内気な主人公の揺れ動く心。そして、チェロパートを率いる大先輩の重み。アマチュアオケの中の人間模様がゆるやかに繰り広げられてゆく。

2.『アマールス』を聞く男:ヤナーチェクの音楽と共鳴する
この短編をお読みくださった方は、ぜひヤナーチェク作曲のカンタータ『アマールス』を聞いてください。きっとその美しい音楽と私の物語が重なって不思議な感銘をもたらすことと思います。

ヤナーチェク作曲 カンタータ「アマールス」(Amarus)は、
Leoš Janáček Cantata Amarusでヒットします。

チェコの作曲家ヤナーチェクの手に成るクラシック合唱曲『アマールス』の悲しくも美しい音楽への想いを胸に書き上げたこの作品のあらすじを著者は次のように書いている。
不幸な出生の月山は、祖父母に引き取られて育つ。大学を出て職にも就くがかれの人生の友は音楽だけであった。職場で事務を手伝っている社長の妻に淡い恋心を抱くが、結局かれは孤独から抜け出すことは出来ない。

3.オセロー~ある友人の死~

本作品の書名『オセロー』は、作曲家ドヴォルザークが、シェイクスピアの悲劇「オセロ」をイメージして作曲した、短いながらも大変美しいオーケストラ曲から受けた強い印象に依っている。
ドヴォルザーク 序曲 オセロ Op.93
物語はこのように始まる:
「君のことだから、演奏会用序曲『オセロー』という曲をもちろん知っていると思います。君の大好きなドヴォルジャークの作品ですからね。長大な交響曲などと違って、これは十三分くらいのオーケストラ曲ですが、音楽の美しさとはこのことかと思うほどです。いまの僕にはこの曲ほど心に響いてくる音楽はないのです。...」

物語全体に流れる死のイメージが音楽の悲劇性に重なり合う。

著者は読者に語りかけるーどのように死を迎えるかは、全ての人にかかわりのある難しい問題です。これを読んだ方も一緒に考えてくださいーと。

4.魂の三重奏:偉大な芸術家の思い出に

 かつては世界的巨匠であったが、いまは過去の人となりつつあるヴァイオリンの老大家と、今をときめく世界的チェリスト、日本の人気、実力とも超一流のピアニストというややミスマッチとも思われかねないコンサートが行われた。

物語を引っ張るのは、日本のある音楽企画会社のプロデューサーの原田という男。
イザール・ギルトマンは半世紀以上にわたってヴァイオリン界の巨匠として世界中のコンサートホールで演奏してきた。八十歳をすぎた今も、現役としてステージに立っている。
七十歳をすぎたとき難病に罹り一年近くも入院生活を余儀なくされ、その病は彼の背骨を大きくひん曲げた。上体は左肩が下がった形に曲がり、これはヴァイオリニストとっては致命的な障害と思われた。しかしリハビリと猛練習とによって二年後に奇跡といわれる演奏活動再開を果たした。
それから更に十年の年月が過ぎた今、魂を揺さぶるような演奏をするこのイスラエルのヴァイオリニストを心から尊敬している原田は、何とかもう一度この人の完全燃焼の場を作りたいと考えた。
原田の夢実現のための奮闘ぶりと、魂の三重奏が実現してゆく過程が見事にありありと描かれてゆく。

5.定年の晩 伴う音楽:ブラームス作曲 交響曲第四番

定年を迎えた男の、最後に事務所を出てから帰宅するまでの心境を追う。

男は事務所を出ると、いつものように神田駅に向かった。まっすぐ帰る気にならず御茶ノ水の古レコード屋に寄り道する。ブラームス作曲 交響曲第四番が頭の中で響いてくる。ひとつひとつの当たり前だったことが今日で最後だと強く意識しながら家への帰り道を辿っていく。。。

30年以上の長きにわたり家族に対する強い責任感を持って勤め上げた仕事人生。しみ込んだ日常が、望むと望まないに関わらず否応なしに大きく変化する。生きていれば普通の庶民にも起こる人生の大変革の臨界点、彼にもその定年の日がやってきた。そしてゆっくりと静かに過ぎていった。

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